親という名の飼育員

子育て在宅ワーカーの奮闘の日々を綴ります

【コラム】子どもを産むのはおすすめしない

子どもなんて産むんじゃなかった。

あなたをこの世に産んだあの日から、私の人生は180度変わってしまった。

 

休みの日は早起きして、カフェでコーヒーを飲みながらぼーっと物思いに耽る。そんな時間が大好きだった。それが今じゃどうだろう。物思いに耽る時間なんて一瞬たりともない。

 

友達とランチをしながら過ごす時間なんてもう最高。思い思いに言葉を交わすその空間が大好きだった。それが今じゃどうだろう。行くのは決まってファミレスばかり。ハンバーグ?スパゲティ?私が食べたいフレンチはこんなところにはない。

 

オシャレだって大好きだった。カツカツカツって響くピンヒールの音は、私にいつもオンナとしての自信をくれた。それが今じゃどうだろう。履くのは決まってスニーカーばかり。公園に行くから土で汚れても目立たない色を選ぶ?なにが楽しくてそんなことしてるんだろう。

 

サラサラの髪の毛なんてもう、私の取柄そのものだった。それが今じゃどうだろう。乾かさなくてもいいように短く切り揃え、好き勝手にハネてむなしそうな襟足。

 

ネイルだって大好きだったのに。ピンクのグラデーションにシルバーのラインストーン。指先のおしゃれはいつも私のテンションを上げてくれた。それが今じゃ日焼けしてささくれた手。

 

キャンドルを炊いて好きな音楽をかけながら、お気に入りの雑誌で明日のコーディネートを考えながら眠りにつく夜。どうしてくれるんだ、そんな私の大好きだった時間。今じゃ夜が明けたって残るのは目の下のクマだけだ。

 

行きたいところに行く、会いたい人に会う。そんな当たり前だと思っていたことが思い付きでできなくなった毎日は、まるで足に鎖が付いているような感覚だ。

 

子どもを産んでから失ったものは数えきれない。

 

今までの自分を作ってきた、大好きだったものはただの贅沢となり、これまで毛嫌いしていたがさつなものたちが日常になりつつある。

 

私はいつから人生の脇役になってしまったんだろう。

ずっとこの人生の主役は自分だと思ってた。死ぬまでずっと。

 

好きな物を買って、好きな服を着て、好きな物を食べる。そんな人生は心底愛おしかった。

 

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でも、不思議だ。子どもを産む前の自分には戻りたくない。

子どもたちと出会えない人生ならば、死んだ方がましだと思えるくらいだ。

 

今日もベッドに入るとふと考える。

この子たちの寝顔を見ながら眠りにつく以外の人生、私に考えられるだろうか?

明日も笑ってくれるならそれだけでいいと、そんな気持ち以上に胸を温かくしてくれる感情に出会えるだろうか?

 

子どもを産むのはおすすめしない。

失うものが多すぎる。それはまるで、羽をもぎ取られ飛べなくなった蝶のようだ。



子どもを産むのはおすすめしない。

そんな蝶になれて良かったと。失った羽の代わりにこの子たちがこの人生に植え付けてくれた小さな芽を、大切に育てていきたいと、一つも失いたくないと、そう心から思えないのなら。